彼女達の事情
始まりと彼女
ここは、何処にでもあるファミリーレストランだ。

昼時の今、店内は恐ろしく混み合っている。

そんな店の中に、目をギラギラさせて、ドリンクバーだけで居座る、三人の客がいた。
メロンソーダを啜りながら、そばかすのある頬を左手でさすり、気まずそうにしているのが、彩葉歩立(さいば ふたつ)。

湯気の立つカフェオレに、湯気で曇った眼鏡をおでこへずらして顔を近づけ、息を吹きかけて冷まそうとしているのが、浦原二三(うらはら ふみ)。

そして、絶望感溢れる眼差しでウーロン茶をグラスに入った氷ごとがぶ飲みしているのが、秋谷一之介(あきや いちのすけ)だ。

彼らの視線の先には、仲良くランチを楽しむ、男女の客の姿があった。

「なぁ、アレ、どう見てもデートだよな?」

メロンソーダをストローで啜りながら、歩立が言う。

「デートな訳ないだろ!良い加減なこと言うなよ!」

歩立の台詞に、一之介が悲鳴の様な声を上げる。

そんな一之介に、二三が静かな声でトドメを刺す。

「間違えなく、デートだよ。お前の彼女……いや、お前が彼女だと思っている彼女は今、本命の彼氏とデートの最中だ。彼女の今日の事は、彼女の親友、まゆみちゃんから俺が聞いた確かな情報。彼女は、デートの時、必ずこのファミレスを利用する。俺達は、まゆみちゃんからのこの情報で、このファミレスで彼女が現れるのを待ってた。そうしたら、ご覧の通りってわけさ」

二三の台詞に、一之介は天を仰ぐ。
仰ぎ見た天には、青空は見えず、レストランの洒落た照明の明かりが眩しく光っていた。

そのあまりの眩しさに、一之介は、目を押さえて「ゔゔっ」と唸る。
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