彼女達の事情

一之介のその様子に、歩立が「可哀想で、見ていられないな」と漏らした。

「可哀想だけど、これが現実さ。一之介、まゆみちゃんによると、お前は彼女から、影でキープくんと呼ばれているそうだぜ。お前は彼女にとって、ただのキープくんなのさ。あの二人を見ろよ。お似合いのバカップルじゃないか」

二三の台詞に、一之介と歩立が彼女の方に視線を送ると、彼女が、「アーン！」と言って、フォークで突き刺したパンケーキを彼氏に食べさせようとしている様子が見える。
それを、三人は、濁った目で見守る。


事の起こりは、こうだった。

二三と歩立が参加した合コンで、二三に猛烈アピールを仕掛けてきた、まゆみという女。
二三は、その、まゆみと話をしているうちに、まゆみの友人が、一之介の彼女であると知る事となった。
そして、ペラペラとよくしゃべるまゆみによって、彼女には本命の彼氏がいて、一之介がキープくんと呼ばれている事を聞かされた二三は、まゆみから、今日、彼女が本命の彼氏とデートをする事を聞き出したのだ。
まゆみの、「あの子ったら、デートの時は、決まってファミレスのアンナに寄って、パンケーキを頼んで、それを、アーンって彼に食べさせてあげるんだって！ウケるでしょ？」の台詞により、一之介、歩立、二三の三人は、真相を確かめるべく、ファミリーレストラン、リトルアンナで張り込こむ事にした。

そして、まゆみの言った通りに現れた彼女の隣には、彼女の背中に腕を回し、彼女の耳元に、終始何か囁いている男がいた。

そして、今、まさに、まゆみが言ったそのままに、彼女は、その男……彼氏にパンケーキを「アーン！」と言って食べさせているのだった。