よるのむこうに


このまま一緒にいても、天馬は遠からず「困る」ことになる。


私はだんだん今のままの暮らしを続けることが難しくなるだろう。

天馬はだらしない人間だが悪いやつではない。
私達の出会いがああいった形になったのも彼の面倒見のよさゆえことだった。
いつか見たストリートバスケも、結果はカツアゲじみたものになってしまったが、そもそも小学生のボールを取り返すためにはじめたことだろう。……たぶん……。そう思いたい。そうでなきゃただのチンピラじゃないか。チンピラだけど。


心の中は単純できれいな人なのだ。苦しむところなんか見たくない。いつまでも今のように気楽で自由でいて欲しい。

私のせいで何もできなくなる天馬を見たくない。
それは我知らず涙が滲むほど切ない気持ちだった。


ずるずると話をすることを先延ばしにしていた私の心がこのとき、定まったのだと思う。

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