よるのむこうに
「夏子ちゃんが話のもって行き方を間違えたおかげで結構迷惑かかってんだけど。
言う権利あるよね、俺」
「……ごめん……」
私は唇を噛んだ。
確かに私が天馬という人をちゃんと理解して話をしていればこんなにこじれることはなかった。
彰久君には関係のない話なのに、私が巻き込んでしまった。
彰久君は私の額にそっと手のひらで触れて安心させると、天馬に視線を向けた。
「この子は病気なの。もうお前のことを支えられないし甘やかしてもやれない。だからもうお役御免にして欲しいってこと。
わかったらさっさと夏子ちゃんの上からどけ。……下手にさわると骨が外れるぞ」
天馬がそのきつい目を大きく見開いた。
「は……病気……?」
天馬は私の顔に手を伸ばした。私は思わずぎゅっと目を閉じた。
けれど、天馬の手は私を殴るようなことはなく、そっと額に触れただけだった。
「……熱も、ないのに……」
「この世にはなぁ、熱が出ない病気もあるんだよ。お前はホンット……いや、俺も人のこと言えないか。リウマチなんて……調べるまで……俺だってどんな病気なのかもわかってなかった」
彰久くんは少し悲しそうな顔をした。同情というよりも、どうしていいのかわからない自分を恥じているようだった。