よるのむこうに
天馬の言いたいことはわかる。
けれど、私達の二年はそういう……世間並みの恋人同士の二年とは違うのだ。
いきなり前触れもなく、なんとなく始まった私達の付き合いは便利と楽でできていて、世間の恋人同士のそれとは違って随分とドライだった。
「……ごめん。
でも、そういうわけだから別れて欲しい。
彰久君が言うほど私は天馬を支えたとか、甘やかしたとは思わないけど、でも、言いたいことは大体彼が言ってくれた。
もう終わりにしよう。
今までどおりの生活は無理なの。仕事も続けられない。病気が進んだら歩けなくなるかもしれない。
……わかるでしょ。最後にひどいことを言いたくないの、察してよ」
私を背負い込むといったって天馬に私を背負えるのか。
そんな事は言いたくなかった。この二年、私は時々説教をしながらもおおむね楽しかった。
天馬を甘やかして、自分の孤独を埋めていたのだ。だから恩に着せようなんて思わない。楽しかったと言って東京での暮らしを懐かしく思い出だせるようにきれいに終わりたいのだ。
「……」
天馬はリビングテーブルの上に目をやった。まだ食べかけだったそうめんが薄くなったつゆの中に沈んでいる。
私も天馬の見ているものに目をやって、気持ちを切り替えるために息を吐いた。
「食事中にこんな話をするべきじゃなかったね。そうめんがのびちゃった。
まだおなか一杯になってないよね。もう一回茹でてくる」
私は水の入ったガラスの器をまとめてキッチンに運ぼうとした。何か作業をしてこの空気を紛らわせたかった。
その私の手を天馬がつかんだ。
「天馬」
顔を上げると、彼は怖くなるような真剣な顔をしていた。