よるのむこうに
「……別れない。
二年も俺を甘やかして、いまさら放り出そうなんて無責任にもほどがあるだろ」
「話、ちゃんと聞いてなかったの。
あんたも彰久君みたいにリウマチのこと、少しでも調べてみなさいよ……。治る病気じゃないんだよ……?
どんな病気かわかったら、そんなこと言えなくなる」
ネットで検索したリウマチの情報を見てしまうと、しばらくは不安で頭が一杯になる。
今はいい薬があるといろんなサイトがそう書いている。でも必ず治りますという言葉はなかなか見つけられない。
「……短気おこしてんじゃねえよ。
お前も俺も、今さら切ろうッたって……無理なんだよ」
何が無理なのか、一人で生きていくのに何が足りないのか、彼自身に説明を求めようと顔を上げた瞬間、大きな手でうなじをつかまれ、顔が引き上げられた。
天馬の乱暴なやり方で唇が重なった。
突然のことだったので、私の運ぼうとしていたガラスの器から水やつゆがフローリングにこぼれ、しみを作った。
「ちょっ……、てん、ま……」
呼吸(いき)をつぐ間もないほど天馬は深く何度も私に唇を重ねた。大きな彼の手のひらが私のTシャツをたくし上げた。
「う、うそ、夜ならともかくこのタイミングでそれはないでしょ……イヤだって、窓が、」
キスの合間に途切れ途切れに文句を言う、が、彼はやめる気はないようだった。
「うるせえよ……」
彼は私の耳に低くそう囁いた。
「お前は俺の女だ。
……そう簡単に逃がしてたまるかよ」
天馬は私の首筋や耳に何度も何度も唇を押し付けながら、つめたい床に私の体を倒した。