よるのむこうに
二年前、丁度27歳の誕生日を迎えたばかりの私は悩んでいた。
女の30といえば節目の年だ。同じ年ごろの女友達はみんな29歳と半年あたりで彼氏をせっついたり婚活をしたりしてさっさと結婚していく。
私も27歳あたりからなんとなく結婚を意識してはいた。けれど。当時の私に彼氏はいなかったし、お見合いというのも少し敷居が高いような気がしていた。そして何より仕事が忙しかった。
私はとある高校の教師だ。周りから見れば公務員だし夏休みも冬休みもある、待遇もいいに違いないと羨まれる。
しかし、教師が生徒と一緒になって夏休みを休んでいると思われては困る。かつての教師は夏休みは休んでいたかもしれないが今はそうではない。むしろ長期休みは他の時期よりも忙しい。
夏休みの教師は部活の顧問をやっているとか進路指導があるとか他校に行って生徒指導の研究などしている。なんだかんだで休みなどないようにできているのだ。
そんなわけで私には恋愛をしている暇はなかった。かといって価値観の多様化した現在において、昔のように恋愛過程を経ずにいきなり誰かと結婚するのも難しい。生徒の目があるのでおおっぴらに合コンというのも……駄目と決められているわけではないがちょっとやりにくい。
こんな状況なのに、自力で彼氏を見つけて結婚せよとはなかなか厳しいミッションである。
私がもし美人だったらそれでも男性のほうから寄ってきたのかも知れない。けれど、残念ながら私は身内の欲目で目が濁りきっているであろう実父にさえ「地味だなあ」と言われるような顔である。限りなく一重に近い二重の目と丸い鼻が足を引っ張る中途半端な「中の下」である。
自分でも小学生くらいのときからうっすらと「自分はいわゆるイケメンとは結婚できないだろう」と思っていた。