よるのむこうに
イケメンとの結婚どころか結婚そのものが厳しいような気がしてきた27歳と6ヶ月のある日、私はふと疑問を抱いたのである。
受験生を受け持ち、かつ運動部の顧問をしている高校教師に婚活をする暇などない。というか婚活も時間的に厳しい。
そんな中で万一結婚できたとしても私は結婚生活を維持できるのだろうか。
夫の食事を作り、洗濯掃除をし、いずれは子どもを生んで子どもの世話もする。
一人暮らしの今現在、けっして整頓されているとはいえない部屋に住んで、コンビニ弁当で夕食を済ませる私に実際そんなことが可能なのだろうか。
世の既婚者は結婚祝いに「一日が25時間になる権利」でももらえるのだろうか。イヤイヤそんな非現実的な。
そんな疑問を抱き始めると自分が結婚したいのか、単に一人の家に帰りたくないだけなのかわからなくなってきたのだ。
その日も、私は悩みながらスーパーの袋を腕に提げてのろのろと商店街をまっすぐ貫く大通りを歩いていた。
商店街の店はおおかたすでに閉まっていて、スナックやパチンコ屋のネオンだけが妙に目立っている。
疲れてぼんやりしていたのがいけなかったのだろうか。丁度パチンコ屋の前まで来たときに誰かと肩がぶつかった。