よるのむこうに
「イタタ……」
天馬がいるといちいち私のうめき声に反応するのでなかなか声も出せない。しかし今のように一人ならばその気遣いもない。
私はうんうん言いながら起きて痛む肘や手首をおっかなびっくり動かす。この時間が一番辛い。
まったく、とんでもない病気になってしまったものだ。
嘆いてもしかたがないのでテレビをつけて朝のニュース番組を見て痛みから気を逸(そ)らし、ぎしぎしと軋むような関節を少しずつ動かしていく。
これは天馬にも言えていないが、じつはリウマチになってからというものブラをつけるのがなかなかきつい。
手を背中側に回すだけでも痛いのに、背中側のホックをかけるのがまた手先を使うので辛い。
いっそフロントホックのブラを購入しようかとも思ったのだが、万一天馬にそれを知られてしまうとあのバカはよからぬ勘違いをしそうで怖い。
関節のリハビリだと思って黙って今のブラを使い続けたほうがいいのか。
「ああ……どうして私が天馬に遠慮するんだ……」
ブラを投げ出してベッドに転がると体がベッドに吸い込まれてしまいそうな感覚に陥る。
薬の副作用なのかリウマチの症状なのか。急に姿勢を変えると視界がぐるぐる回って体が一気に重くなる。
ぐるぐると回る天井を見つめていると目が回りそうなので、いや、もう目が回っているのか。
私は気分が悪くなって目を閉じた。