よるのむこうに
どうか天馬が洗濯を忘れて出勤していますように。
祈るような気持ちで体を起こしたけれど、残念なことにエアコンの風で冷えた体は毎朝の比ではないほどこわばっていた。膝や足首、手首などが動くたびにキリキリと痛んだ。
軋む関節をさすっていると、冷えの影響かトイレにも行きたくなってくる。
水分をほとんど取っていないとはいえ、昨夜トイレに行ったきりでもう夕方なのだ。当然私の膀胱も限界だ。
「う~っ……トイレトイレトイレ……!」
悪いことは重なるもので、急いで足をさすっていると玄関のインターホンが鳴った。時期を考えると新聞の集金だろうと想像がついた。
ここで集金の人に帰られてしまうとまた不都合なときに再訪問となってしまっても困る。
私は強引にベッドサイドの床に足をついた。
床がひやりとしたが痛みはない。
なんだ、大丈夫じゃないか。
立ち上がって歩き出そうとしたその時、ふくらはぎに激痛が走った。
「あッ……!!」
膝をかばおうと床に手をつくと、手首にも激痛が走った。どん、と体全体に響くような音を立てて、結局尻もちをついてしまった。
唇を噛んで痛みに耐えていると、じわりとスウェットに温かい液体がしみていく。
新聞の集金の人は何度かドアの前でゴンゴン、と扉を叩いていたようだが、そのうちに立ち去ったようで何も聞こえなくなった。