よるのむこうに
「……」
静まり返った寝室で、私はぐっしょりと濡れた自分のスウェットを見下ろした。
もともと明るいグレーだった私のスウェットにははっきりそれと見てわかるほどの黒っぽいしみができている。
こんな事は初めてだった。起き上がるときに痛みを感じることはあってもトイレに間に合わないなどということは今までなかったのだ。
病気だから仕方のないことだ。
症状が落ち着いたらこういった失敗もなくなるだろう。
いいほうに考えて必死で自分を宥めようとしたが、それでも不安に飲み込まれそうになる。
リウマチは進行する病気だ。
薬でいくらその進行を食い止めたって、薬が効くかどうかは個人差が大きい。
このペースで病状が進行したら、私は三十代で寝たきりになることだって考えられる。
リウマチは死病ではない。でも、死病でないけれど辛い。私はこれから寝たまま四十年を生きるのか。
泣いてはいけない。悲しんだって誰も助けてくれない。
ストレスも過労もリウマチを悪くするだけ。楽しい事を考えて病気の事を忘れている時間をなるべく長く、長く……。
「無理……」
自分の尿で汚れたスウェットに私の涙がぽとりと落ちた。