よるのむこうに
11、彼の世界 私の世界
「天馬、まずいんじゃないの……」
たくさんの人が忙しそうに動き回っている。
私達とすれ違った人たちはみんなすらりとしていてどこか垢抜けた格好をしている。一方私は普段着のところをいきなり天馬に連れ出されたので髪も服も適当なものだ。
「なにがまずいんだよ」
「だって……私は思いっきり部外者じゃない。やっぱり外で待ってる」
「女が一人で時間つぶしなんて、ナンパでもされたらどうするんだよ」
「ん?私ナンパなんてされたことないよ。地味だし風景と同化できるよ」
「お前……」
関係者以外立ち入り禁止と書いたプレートがあちこちにさがっている。
普通に字が読める人ならばそれ以上ずかずかと入っていくのは躊躇すると思うのだが、天馬は私の腕をつかんだまま引きずっていく。
たぶん字も読まないし私の関節が普通の人よりも脱臼しやすい状態だということも忘れている。
「あ、あのさ天馬、腕をひっぱらないで」
「素直についてこないお前が悪いんだろ。早くしろよ遅刻する」
「ちょっと、そんなの聞いてないんだけど!何時に入ればいいのっ」
「十時半」
今現在すでに午前十時40分なのだが。