よるのむこうに
3、自称パチプロと教師はいかにして男女の仲になったのか
財布から3万円を抜かれた夜から一週間が過ぎた。
私は「あのイケメンにもう一度会いたい」という気持ちと「いい年をしてあんなチンピラとお近づきになってうっかり恋でもしたら本気で婚期を逃してしまう」と自分をおさえようとする気持ちの間で揺れていた。
たぶん、このまま会うこともなければ私はいつしか彼のことを心の隅に片付けてしまっただろう。
そしてそのうちに恋の予感すら日常の忙しさにまぎれて忘れてしまったのだろう。
けれど結論から言うと、私はまた彼に会うことになった。
彼にはじめて会った場所は通勤途中の商店街で、自宅からも近い。よく使うスーパーのそばでもある。
会わないほうが不思議なのだ。
土曜日の朝、私はくたびれたスーツやシャツを紙袋につめてクリーニング屋に向かっていた。
運がよければ(悪ければ?)私はあのイケメンにもう一度会うかもしれない。そんな考えも少しはあった。
その日、九時少し前のパチンコ屋の前には長い行列ができていて、独特の雰囲気をまとった男女がずらりと並んでいた。
すでに何度もその道を通ってもイケメンに再会できず、やや諦め気味だった私は、行列に並ぶ背の高い男の姿におもわず声を上げた。
「あ」
彼ははじめ訝しげに私を見ていたけれど、やがて初めて会った日と同じ、少し皮肉げな笑みを浮かべた。
「よぉ」