よるのむこうに
兄や両親は、私がスポーツ選手の熱烈なファンになったと思い込んでいる。いや、そうれはあながち間違いではない。たしかに私は熱烈なファンだ。
テレビ画面に映し出された天馬は、赤と白のユニフォームを着ている。
画面に映し出される彼は私と一緒にいたころよりもずっとずっと精悍な姿をしている。
私が東京を去って半年後、天馬は突然プロバスケチームの選手としてテレビに映るようになった。
元の職業がモデルだったこともあり、突然バスケの世界に現れた天馬はイケメンバスケット選手として注目された。
日本ではバスケットボールの競技人口は少なくない。多くの高校にバスケットボール部はあり、けっして珍しいスポーツではない。
けれど、プロスポーツとしては野球のように常に注目されているとは言えない。
そんな状況の中、元モデルという肩書きを持つ天馬の存在は、元々バスケに興味のなかった女性たちをひきつけた。
まだバスケットボール選手としては新人なのにスター選手よりも注目され、早くもいくつかの女性誌が彼のインタビュー記事やグラビアを掲載していた。
私はそんな天馬を今も影ながら応援している。
私と別れてすぐに活躍し始めた天馬の姿を見るにつけ、私はやはり彼にとっていい存在ではなかったのだと思い知らされるようだった。離れてよかったのだと思う。
離れた場所で好きなことに打ち込んでいる彼を見るのは嬉しかった。
別れ方があんな形になってしまったので、さすがに彼が実際に出る試合の応援には行けない。
だから私はスポーツチャンネルで放送される彼のチームの試合はほとんど見ることにしている。