よるのむこうに
これほど恨まれているなどと、一度も想像しなかったのだ。
「ごめん、ごめんなさい……天馬……」
「謝るな!
……いや、謝れ。絶対に許さねえけど、それでもお前は謝れ。ずっとそうやって謝ってろ。許さねえけどな……!
俺はお前の気分次第で捨てられる犬っころじゃねえ、お前は俺の飼い主じゃねえ!」
「わかってる……そんな風に思って、出て行ったんじゃない……」
「善人ぶってんじゃねえよ。年下男を囲って邪魔になったら捨てて、お前はそれでよくても俺はどうなる!
俺を見ろよ、泣いてんじゃねえ。俺を見ろ!」
恐ろしさと、そして想像だにしなかった激しい憎悪を向けられていたショックで、私の目尻から涙がこぼれた。
そんなつもりじゃなかった。
苦しめようとか、彼を軽んじていたとか、そんな気持ちであの部屋を出て行ったわけじゃない。
天馬のことは愛していた。一緒にいる時間が長くなればなるほど気持ちが惹かれていった。
愛しているからこそ、私が傍にいてはいけないと思ったのだ。
天馬の大きな手が私の顔をつかんだ。力づくで顔を上げられ、私は怒り狂った天馬の顔とまともに向き合う形になった。互いの息を感じるほど顔を寄せ、天馬は私を壁に押し付けた。
「クソが……。
お前のせいで、こっちはどれだけ苦しんだと思ってんだ……」
「だって……、私がいたら、天馬は……今みたいにバスケの道には戻れなかったでしょ……」
「お前がいればバスケなんかいらねえよ!」