よるのむこうに
「罵倒されても泣かれても無理やりにでもつれて帰るつもりだった」
彼はそう呟いてにやりと笑うと、私に深く口付けた。
まだ激しい嗚咽が止まらない私は、息の苦しさに何度も唇を離した。
けれど、天馬は苦しがる私を押さえ込んで、何度も何度も唇を重ねた。
「観念しろ、夏子。
お前の負けだ」
囁きはこの上なく甘かった。
観念するも何も、私はもう抵抗する気力さえなかった。
それほどに、彼の言葉は毒のような力をもって私の理性をめちゃくちゃにした。
天馬の大きな手が私のスカートをたくし上げた。
さすがに、私ははっと我にかえった。
「あっ、ちょ、天馬……、す、するの?え、今?」
「何もったいぶってんだよ。お前はどうか知らねーけど俺は二年も女とやってないんだよ。いやがってんじゃねーよ」
「も、もったいぶっ……、あんたねえっ、私だってあんたと最後にやってから一回もしてない!人聞きの悪いこと言わないでよ!!」
「……空気読めって。腰上げろ」
天馬はそういうとムードも何も無い性急なやり方で私のストッキングとショーツを一気に引き摺り下ろした。
私は悲鳴をあげて天馬の胸を蹴った。
「いっ……て。何だよ、お前俺が好きだって言っただろ!また嘘か?」
「嘘であんなこと言えないわよバカ!」
私が天馬を愛しているのは間違いないが、しかし二年ぶりに再会して一時間もたたないうちにしようとするって人としてどうなの。もっとなにかあるんじゃないの、二年ぶりにデートするとか、近況を語り合うとか。
それなのに、いきなり人の下着に手をかけるなんて。動物じゃないんだから。
「だったら素直に足開けよ。……男に二年がどれだけキツいかわかってねえだろ」