よるのむこうに
18、よるのむこうに
平日だというのに、空港内は多くの人で混雑していた。
「やーっぱりね。こうなると思った」
久しぶりに会う彰久君は以前にもまして華やかで、そして洗練されていた。
今はもう自身でモデルをやる事はないのか、広告や雑誌で彼の姿を見ることはなくなっているので本当に久しぶりに彼に会う。
久しぶりに見る彼はどこからどう見てもやり手の実業家になっていて、以前の女の子のような中性的な雰囲気は残っていない。二年で人はこんなに変わるのか。
私は久しぶりに会う彼の雰囲気の変化に驚きつつ頭を下げた。
「その節はお世話になりました……」
彰久君には本当にみっともないところばかりを見せてしまった。
二年前、夜逃げ同然に引っ越したのでちゃんとお詫びとお礼を言う機会がなかったので、私は彼と会うなり挨拶もそこそこにそう言った。
「ここぞとばかりに見送りなんか来てんじゃねえよ。お前、どうせ夏子に会いにきたんだろ」
天馬はせっかく見送りにきてくれた彰久君に憎まれ口を叩く。私は横でそれを聞いていてひやりとした。しかし、彰久君は天馬の口の悪さには慣れっこになっていて、気を悪くすることもなく頷いた。
「うん、確かにお前に用はない。夏子ちゃんに会える機会を逃したくなかっただけだ」
天馬はそれを聞いて舌打ちした。
「おい夏子、俺ちょっと荷物預けてくるけど、口説かれるなよ」
「バカ!変なこと言わないでよ」
「彰久、そいつが俺の女だってこと、忘れんな」
天馬は軽く釘を刺してその場を離れた。なんだかんだ言いつつも、私と彰久くんを残してその場を離れる辺り、一応彰久君のことは信じているらしい。
「なんだかあいつ、変わったね。良くなったって意味で言ってわけじゃないよ、やることはやるようになったけど性格はちょっと悪くなった」
彰久君の感想を聞いて私は苦笑してしまった。
たしかに天馬はちょっとストーカーっぽくなってしまった。私の携帯が鳴るといやな顔をするし、私が出かけようとすると行く先を聞き出そうとうるさい。以前はこんな人間ではなかったのに。