よるのむこうに
薄く目を開けると、ベランダで天馬のTシャツが風に揺れていた。
狭いベッドの中では天馬が身を縮めるようにして眠っている。
まっすぐに通った鼻筋に引き締まった唇。じっと動かないでいるその横顔は起きているときよりもなお美形に見えた。
私は静かに指先で彼の長めの前髪を持ち上げてみた。
きれいな額を前髪で隠すなんてもったいない。と思ったが、彼の髪の根元が黒々としているのに気付いた。余裕がないのか無頓着なのか、長い間ヘアサロンにはいっていないのだろう。
突然、天馬が細く目を開けた。
私は驚いて身を引いた。
「……何時、」
「7時……」
私は昨夜のことを思いだして突然恥ずかしくなった。下着さえ身につけない体が恥ずかしく、手元のタオルケットを引き寄せた。
「マジか……」
彼は枕元に置いた携帯を手にとって、着信を報せる赤い光の点滅に眉をしかめた。
これは私の勝手な想像だけれど、それはきっと……彼が帰らないことについての電話なのだと感じた。