よるのむこうに


すごい、私ってこんなこともできるんだ。
それほど親しくもない、素性も知れない怪しい男とセックスしてしまうなんて絶対に傷つくだろうと思ったのに、実は案外そうでもない。

私という人間は、私がイメージする私よりも実は乱雑な神経でできているのかもしれない。
ふられた悲しさはない。簡単なセックスに対する罪悪感もない。
私は大きくあくびをするとベッドに戻った。
まだその時間ならばベランダからは駅の方向に向かう天馬が見送れたかもしれない。でも私はベランダに向かおうとはしなかった。

そういうマナーが必要な相手ではないからだった。
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