よるのむこうに
私は小学生の男の子が抱えている雑多な駄菓子をちらりと見た。どうみてもパチンコの景品だ。
近所の小学生にまで「パチンコの兄ちゃん」なんてあだ名をつけられているとは知らなかった。
困っている小学生を助けるのはいいが普段私の見ていない時間にどれだけパチンコ店に入り浸っているのだろうかと思うとちょっと情けなくなった。
「どっちがどうなったら勝ちなの」
「先に5点とったほうが勝ちって決めてはじめたんだけど、もうパチンコの兄ちゃんが一人で15点くらい取ってるよ」
「いつ終わるの」
「わかんない!でもいいじゃん兄ちゃんカッコイイし!」
天馬は左右の手で器用に二人の男からボールを守りながら合間に彼らを煽ってボールを取りにこさせるが、触らせない。
たぶん天馬と二人の男の間には体力技量共に大きな開きがあるのだろう。バスケットについてほとんど何も知らない私にもそのくらいのことは一目で理解できた。
「あいつ……」
私は米袋とエコバッグをその場に置いてため息をついた。
私が米袋を置いてその試合モドキを観戦し始めてから5分ほど経過したところで男の一人が地面に倒れこんだ。
それを見てもう一人も戦意を喪失したのか、体をくの字に折って肩で息をして動かない。
天馬は眉をあげて彼らの様子を見ると、彼らに何か言って財布を出させ、一人数千円づつ受け取った。
賭けていたのだ。
なんとなく嫌な予感はしていた。私達が出会ったときと同様、天馬は自分が叩きのめした相手から「クリーニング代」を取っているのだ。
「おう、ボール取り返したぞ。もうとられるなよ」
天馬は小学生にボールを返してパチンコの景品を受け取ると、米袋の脇で段差に腰掛けている私に視線を向けた。
「……お前、何やってんの」
いやそっちが何をやっているんだ。