よるのむこうに

「やったあ。餃子も食べていい?」

天馬は大きな手で私の髪をくしゃくしゃにした。

「ちゃっかりしてるな。……いいぜ、俺も今日は唐揚げでもつけるかな」
「おおお。さっすがスーパーモデル。やるじゃん」

スーパーモデルどころか自称パチプロのバイトモデルだがまあそれはいい。労働の報酬で食事をする。素晴らしいことではないか。普段の天馬を思えば十分に賞賛されるべきことだ。

天馬は私の反応に気をよくしてさらに私の髪をくしゃくしゃにした。

「おう、今日はツイてたからな」

あまり笑うことのない天馬が歯を見せて笑った。


「…………………へえ……」

ま た パ チ ン コ で す か 。

一瞬でも仕事をしたのかと期待した私が馬鹿だった。
いや、何度裏切られれば期待することを止めるんだ。
人間、こういう気ままな生活に慣れてしまえば二度と厳しい生活に戻ろうとは思わない。そういうものだ。教師に憧れて努力して教師になった私だってたぶんそうだ。
一度仕事をやめて、それでもなんとなく生活していけるのならば、ふたたびあの通勤電車に乗る勇気が出るかどうか。

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