よるのむこうに
「病状が落ち着くまで、すこし休養されてはどうでしょうか。幸いもう夏休みですし、その間にかわりの先生を探すこともできます生徒の同様も比較的小さいかと思うのです」
校長は人あたりのいい穏やかな顔に困ったような表情を浮かべている。
同席する教頭もなんだか気まずい表情を浮かべていて、私は迷惑をかけている彼らの顔をまともに見ることが出来なかった。
今日は終業式だった。夏休みの諸注意や校長先生の挨拶、それらを聞きながら同僚たちは立って生徒たちを監督している。
そんな中、私一人だけパイプ椅子を出してもらって座って話を聞いていた。目立たない場所に席を作ってもらったとはいえ、やはり一人だけ座っている私の姿はそれなりに目立ったに違いなく、こっそりと私のほうを盗み見る生徒もいた。
なんでもない顔をして終業式をやり過ごして、そのあと教室に戻れば副担任の先生の補助を受けて配布物を配り、生徒たちに話をすれば今日の大事な仕事は終わりだ。そういう気のゆるみがあったのかもしれない。
終業式が終わって歩き出した生徒たちの後に続こうとして、私はまた立ち上がれなくなった。幸い同僚の体育教師が気付いて私の代わりに私のクラスの生徒を誘導してくれたけれど、………さすがに私自身も痛感した。
もう、限界だった。