よるのむこうに
時折立ち上がることも難しくなる私が天馬といっしょに暮らすこと。
そんなことは想像がつかなかった。
今でさえ起き抜けはしばらく患部をさすっていないと動けない。まだ天馬に気づかれてはいないけれど、いずれは隠している事が難しくなる。自分のことを自分でこなすのも難しくなるかもしれない。
私達は結婚しているわけじゃないし、そうしようと話したこともない。付き合っているかどうかすらわからない。
私がひとりで生活できなくなった時、頼るべき相手は彼ではない。たぶん……独身の私が頼ることができるとすれば、実家の両親か兄弟くらいで、決して彼ではない。
私の病気を知った天馬はどうするだろうか。
私が彼の世話をすることはあっても逆は……たぶん無理なのではないだろうか。彼が極端に冷たい人間だといいたいわけではない。けれど、今まで築いてきた私達の関係では今後私達がこれまでどおり一緒にいることは難しいのではないだろうか。
仕事をどうするかで一杯になっていた私の頭の中に、仕事を押しのけるようにして天馬のことがのしかかってきた。