よるのむこうに
2、自称パチプロと教師はいかにして出会ったのか
わずかにあけた窓から細く夜風が入ってくる。花の香りをかすかに含んだ春の夜風だ。
電気を消した八畳間の天井を見上げて、私の隣で寝そべっている天馬の顔をうかがった。
普通のシングルベッドに大人二人はただでさえきついのに、天馬が大きな体を押し込んでくるものだから、私は寝返りも打てない。
私は天井に目線を移動させた。
こんな話を女のほうからするのは恥ずかしい。
男ならそこは察してくれよという勝手な気持ちもある。
でも天馬は女の体の都合を察するような細やかな神経はない。
だから私が言わざるをえないのだ。
「あ、あのさぁ、天馬……」
もうすぐ生理が始まる。(予定だ)
だから、おしべとめしべがアレをするならば、今夜あたりが丁度いいわけだ。
天馬は世間一般の思いやり溢れる彼氏たちのように彼女のバイオリズム……というか、生理に合わせて自分の性欲を自ら調整するような繊細な心遣いはそもそも持ち合わせない。空気を読むような彼氏力などないのだ。いきなりひとの下着に手を突っ込んできて、調整中だとわかると舌打ちするような悲しい人間である。だから情けないことだけど、私が言わざるをえないのだ。
「……ねえ、そろそろなんだけど」
「何の話だよ、ねみぃ……」
あんた私が帰ってから腹減ったと眠いしか言ってないんだけど。一瞬キレかける私だが、うす青い闇の中に浮かび上がる彼の背中や、うすい肌がけを掛けたお尻の筋肉をうっかり視界に入れてしまい、つい頬が緩んでしまった。
「え、えっとぉ、そ……そろそろ女の子の日なんだけどね」
「ハァ?」
天馬は本気で眠そうな声を出した。
「し、しておかなくていいのかなーって」
「なに、やりてぇの?」
違う!そういうのじゃない、いや、言わんとしていることは近いがそういうニュアンスじゃない!