再生する
なんだこの部屋は。
どうして玄関にも廊下にも服が散乱しているんだ。
どうしてシューズボックスにゴミが詰め込まれ、本来そこに入るはずの靴が廊下に並んでいるんだ。
どうして靴の間に、マグカップや牛乳パックが置いてあるんだ。
固まったままでいると、神谷さんは「ううっ」と唸って、トイレに駆け込んだ。限界だったらしい。
トイレから聞こえてくる苦しそうなうめき声や咳に耳を傾けながら、どうするべきか迷った。
飲酒を止めなかったのはわたし。
神谷さんは「介抱してくれるよね」と言った。
だったらここに残ってちゃんと介抱するべきだけど……。
意を決してヒールを脱ぎ、物が散乱した廊下を行く。
ドアを開けた先、リビングはもっとひどい状況だった。
脱ぎ散らかした服と大量のゴミ袋が床を埋め、その上には使用済みの皿やコンビニ弁当、カップ麺の容器が捨て置かれている。
それらに埋もれたテーブルの上も同じような状態で、汚れた皿や容器があったけれど、その下には未開封の郵便物がテーブルクロスのように敷かれている。
そのテーブルや、ソファーらしき物体までの道はなく、どうやってこの部屋を使っているのか、全くもって想像できない。
汚い。絶望的に汚い。
あわよくば男女の関係に、なんて考えていたのが恥ずかしい。
いくら酔っていたとしても、こんな部屋でするのは嫌だ。
じゃあさっきの「覚悟はできてる?」という言葉の意味は、男女の関係になる覚悟ではなく、この絶望的に汚い部屋を見る覚悟はできているかということか……。
仕方ない。この部屋に来てしまった以上、ちゃんと介抱しなくては。