再生する
「やっぱり、青山さんは優しいね」
優しい顔でわたしを見下ろしながら、神谷さんが言う。
「俺のことで心を痛めて。悪いことしちゃったなって思う反面、嬉しくて仕方ないよ」
「優しくなんて……」
「青山さんがうちの店で働き始めて、その優しさでどれだけ救われたか。彼女のことを忘れられなくて女々しく生きていた俺にとって、どれだけ有り難かったか」
それはわたしの台詞だ。
わたしがこの二年、どれだけ神谷さんに救われたか。
「よく気がつく優しい青山さんが、ずっと前から好きだったよ」
その言葉を言われるのは、三度目だった。今度はちゃんと素面で、ゴミ屋敷ではない部屋で。
「青山さんと一緒にいたい。店長と店員……上司と部下じゃなく、恋人として」
神谷さんはそう続け、やっぱり優しい顔で笑う。
がらんどうの部屋で、当時の神谷さんの気持ちを追体験し、今、わたしが思うこと。
思うことはちゃんとあった。それを伝えなければ。
深呼吸をして鼓動を落ち着け、充分に間を取ってから、口を開いた。
「わたしは、神谷さんに恩があります」
「……恩?」
「今の店で働き始める前、わたしが会社勤めをしていたのは知ってますよね」
神谷さんが頷くのを確認してから、続きを話し始める。