スケッチブック





 ――――で、時は戻る。


 通学路を歩いていた片石の顔には殴られたのか、あざがあった。唇の端には絆創膏らしいのが貼ってある。よくある不良の図、という感じだ。

 私が前に彼と話したあの後、あの森や吉岡らが片石に何かと絡むことが増えた。絡むといえば聞こえがいいが、実際は「調子のってんじゃねーぞコラ」という感じである。
 片石ともう一人、伊藤にしつこく絡むそれは学校内のあちこちでやられ、怖いというのが素直な思いだった。 



「あのね、山口さん」



 久々に部室に行ってみたら、一年生が困った顔をしていた。無理もない。
 辺りは目は絵具が散乱していた。ポスターカラーの空となったものが床に転がり、画用紙が破られていたり、と酷いものである。


 たまに、あるのだ。
 あの不良グループがあちこち入り込んで、こんなことをしていくのは。


 美術部がやられたのは初めてだが、吹奏楽部なんかもやられたことがあるのを知っている。床には絵具以外に、参考にする本や過去の作品が散乱している。
 ここにくるまでの廊下も酷いものだった。大抵学校の壁には、風邪注意!とか薬物使用は云々とかいうポスターが貼っているものだが、それらが無惨な姿となっていた。そして、部活で書いた昔の絵も。


「貴方の絵も…」
「やられたんでしょう、他のも散々だったのを見ました」
「…ええそうなの。昨日の放課後に入り込んだみたい。昨日は誰もいなかったから」


 一年生のほうを見たら、ばつの悪そうな顔をしていた。部活は基本は毎日あることにはなっているものの、最近この一年生についていけなくなった私は出入りが少なくなっていた。どうやら一年生もどうせ先輩いないし、という感じ立ったのか。



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