スケッチブック
「で、ここからが聞いた話なんだけど――――いや、これが終わったらにしよう」
部室ばひどい有り様。先に片付けたほうがいい。
みそのの聞いた話というのはあとになり、私らは片付けに必死だ。ポスターカラーで落書きもされているそれを、消す。無駄に使いやがって、タダじゃないんだぞ、と投げつけたくなる。
もちろん、この日は片付けで終わりだ。
綺麗にしたとはいえ、あの惨状を片付けてからも何かしようとは思えない。そういってみそのは「今日は解散」と告げた。
さよなら、と挨拶をしていく後輩に返しながら、扉の奥に完全には消えたのを見計らって「なんだかなー」という。
「今の先生になってから、なんか微妙だね。前の先生がびしばしだったから余計かもしれないけど」
ばらばらとなった絵。
昔書いたデッサン、先輩の絵。ポスターカラー。参考の本。
一年生が書いた、アニメキャラの上にはオタクキメェ、とか書かれてある。一年生はそれがこたえているらしい。スケッチ帳までぐちゃぐちゃにされたらやけくそになるだろう。
いくつかのスケッチ帳が無くなっているという。そのひとつが私のでもある。
「先輩らとも微妙だったしね。阿久津先輩とかやばかったし」
「ちゃんと考えてないんじゃないの、みたいな」
三年生はもうほとんど受験に集中し、部活に顔を出さない。阿久津という怖い先輩は近くの高校を目指しているわけではないらしく、特に見ない。
私が一年生のころ、この美術部はコンクールに力を入れていた。先生が、といったほうがいいのだろうが、先生が指導してくれた絵はコンクールに入賞していたから、いくら阿久津先輩が鬼のようなの怖くても頑張れた。
「凛が優秀賞とった時なんて、まー、怖い顔してたね」
一年生の終わりだったか。
小さなコンクールではあったが、優秀賞を貰ったことあった。そのとき、もちろん他の部員も出した。阿久津先輩も。先輩は絵はうまい。けど、なんだろう。ひしひしとライバル視されている感が酷かったのだ。