スケッチブック





 先生方はいつも疲れていた。とくに生徒指導の先生は。
 それもそうだろう。
 生徒のこともあるが、親からの苦情や話を受けなければならないのだから。



「凛、学校大丈夫なの?」



 母がなんとも言えない顔をして聞いてくるのも、これがはじめてではない。大丈夫、平気と返す。



「嫌ね、真面目にやってる子もいるのに」
「でも」
「うん?」
「…そうでもなかったりするんだよ。真面目にっていうけど、やったことを悪いことしてる連中のせいにしたりしてるし」
「そうなの…それは酷いわね」



 偉そうに怖いとかいってる同級生だって、結構やってるのだ。
 なんのつもりなのだろう、と思う。
 壊したって、ただそれだけじゃないかと。どうせやるなら自分のものにして欲しい。学校のものだと迷惑になる。

 学校についてからも、同級生らは先輩らと片石のことで話していた。



 私はというと、スケッチブックが消えたため買わないとなと思っていた。一応美術部で買ってくれるそれを使わせて貰っていたのだが、部費にも限りがある。

 授業のあとには掃除が待っている。スクールバスは大体授業が全て終わったあとと、部活をしている子用の時間のとがある。今日は私は二便目のバスに乗ることを決めていた。

 部室に寄り、スケッチブックや絵の具をチェックしてくる。そのあとはまあ、時間までふらふらしていればいい。
 片石らは姿を見せていない。あの部室事件から数日たっているものの、まだ出てこられないのか。


 ―――静かでいい。

 先生方が話しているそれは、多分本音だったんだろう。問題児がいなければ平和に過ごせると。私はそれを鼻で笑う。平和に過ごせるだって?


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