スケッチブック





 どこかでものが壊れていたり、出されていたりしている。やった本人はそ知らぬ顔で知らないといい、また面白がって繰り返す。どうせ問題児のせいになるからと。だから今、問題児が不在であるため悪戯は少ないのは確かだ。


 部室に行けば、案の定誰もいない。
 いない方がいいか、などと思いながら鞄を机に置く。


 普段は美術室であるここは、授業にも使うので広さがある。窓側に水道があり、使ったパレットや筆を洗うのに便利なようになっている。

 美術室の後ろには、倉庫のような小さな部屋がある。絵をしまっておいたりしているのだが、用があるのはそちらじゃない。
 廊下側にある棚に用事がある。
 上のほうには作品がおかれていたりするが、下には美術部の絵の具なんかがおいてある。で、新しいスケッチブックも多分あるはずだが…。



「おい」
「!?」
「そんなに驚くことねえだろ」


 
 普通背後から声がしたら驚きます、と文句を言いたくなる。
 そこにいたのは、まだ青あざが目立つ顔。片石だった。ぎょっとしたのは仕方がない。そもそも何故「ん」って。

 片石がぶっきらぼうに差し出すのは――――まさかと思った。



「いらねぇのか」



 不機嫌なのかむすりとしたままだったが、私は慌てて「い、いります……」と受けとる。片石は無言。何かいってくるのかと思ったら、そのまま。


「じゃあな」
「え、あ、うん」


 思わずうんといっただけで、私は意味がわからないと受け取ったものを見た。


 つぎはぎ、という言葉が浮かんだ。


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