スケッチブック
取りたくても取れない―――「誰だ」と近づいてくる気配に泣きたく「藤谷のことは」なったのだが、急に三年生に呼び出されている後輩…片石が口を開く。それに「あぁ?」と森がそちらに意識を向けた。
おかげで森がこちらに来ない。だがまだどうなるかわからないので、怯えたままそこにいた。
「疋田の親がいたの、知らなかったんすか。凄い勢いで電話してたんで、そのせいでしょう。あの親と取り巻き、いっつもふらふらしてますから」
「あのくそばばあか」
疋田といったら、PTAの会長じゃなかったか。あの、不良は学校に来させるなとかわめいているという。
森は舌打ちをしながら、「おい吉岡、行くぞ」と靴を鳴らしながら去っていく。ああ、と力が抜けたのもつかの間。
「おい」と声。
ヤバイ。顔をあげられない。でもあげないと「山口」ひぃ!何で名前!
思わず顔をあげてしまったら、そこにはやはり片石がいた。あわあわしていると、「お前な」と。
「あのタイミングで筆箱落とすなよ。こっちがひやひやしただろーが。目つけられたらめんどくせぇぞ」