スケッチブック
しゃがんで、先程派手な音をたてて転がったペンケースを拾って、ほら、と差し出してくる。私は呆然としながら受け取り、お礼をいう。庇ってくれたらしい。
片石と話すのは初めてな気がするものの、彼は私の名前を知っていた。
何故。
聞いたら「この前、絵のなんたらの賞とかいって貰ってただろ」とけろりという。
この前、交通安全のポスターに応募したら賞にひっかかったのである。部活としてはそれを廊下に貼っていた(私としては何だか恥ずかしかった)し、学年通信でも紹介されていたんだったかと思い出す。それを片石が知っているというのに驚いた。
見ている人は見ているのか。
先生が変わり、後輩のやる気は妙な方にいっていて、絵は好きだが部活らしい部活じゃなくなっているそれによくわからなくなっていたけれどちょっと嬉しかった。
「それから」
「なに」
近くに置いていた鞄を片石は掴む。
「お前さ、この前バス停の向こうにいただろ」
「なんで」
「なんでって、違うのか」
――――この地域にはいくつか不良のたまり場のようになっているところがある。
時間帯にもよるが、よく見かける場所なので、先生方なんかもよく見回りしている。