スケッチブック




 私はちなみに、ただうろついていただけ。絵になるような何かがないかと思っていただけなのだが、本当に運がない。

 藤谷というのは森や吉岡と同じく、問題児で有名な三年生である。この三人は授業に出ないでふらふらしたり、授業を中断させたりするため大変な存在となっていた。そして二年生には、この片石や伊藤というのもちらほらといるおかげで、私の通う中学は荒れていることで地域に知られていた。


 あの日、藤谷が悪ふざけでロケット花火をバス停のある小さな待ち合い室に放ったのを目撃したのである。道路をはさんで向こう側で。
 まじかよ、と思った。存在感ゼロだったからか、藤谷は私のことなど気がつかないで逃げた。が、運悪くそんな場所に片石がふらついていたら、疑われるに決まっている。

 実際、疑われた。
 学校ではそのやっぱり、とか第二の森だとか、同級生が話のネタにしていた。

 ――――やっぱりって、なんだよ。
 何だか腹が立った。



 片石は別になにもしていなかった。むしろ驚いていたし、通報があったらしい学校の先生は慌てて片石を問い詰めたりしていた。

 あんな場所に私が出ていけるはずもなく。

 かわりに、私はとある先生にこっそり話したのだ。これはいわゆるチクリなんだろうが、このままでは片石のせいにされそうではないか。片石も片石で普段が不良めいているので、一部の先生からはあまり信用されていないことを知っていた。このままでは、と。


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