先生。あなたはバカですか?


“お前、限りなく根暗だな。さしずめ参考書とお友達ってところか”


前にあの男に言われた言葉を思い出す。



あ。


何か、腹が立ってきたわ。



『翠ちゃん?眉間のシワが凄いよ?』


『……気にしないで。』



いけない。


つい、顔に出てしまった。


額のマッサージをしながら話を続ける。



『私の事はいいとして、花織ちゃんは誰かに…その…恋?とかしているの?』


私には、“恋”とか、口に出すのすらむず痒くて、モゴモゴとそんな質問をすると、


花織ちゃんは、一度キョトンとした顔で私を見た。





そして、だんだんと口が横一文字結ばれ、みるみる頬が赤く染まっていく。



いくら鈍い私でも、“あ。”と思った。


花織ちゃんは間違いなく、“恋”をしている。


『あのね。実は、ずっと叶うはずのない恋をしてたの。凄く、凄く大好きで、いっそ叶わないのであれば、見ているだけでも幸せかなって思ったりもしてね』


花織ちゃんは、クッションを弄りながら憂いの帯びた表情でそこに目を落としている。
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