先生。あなたはバカですか?
「で?」
「…な、何ですか…」
「何って。こっちが聞きたいんだけど。
お前があんな風になるなんて珍しいだろ?一体何があったんだよ」
私の顔を覗き込むように、少し上目遣いになる先生は、いつもよりどこか幼く見える。
スーツを着ていないせいもあるのかな。
Tシャツとスウェットなんて、先生が先生じゃないみたいで何だか不思議だ。
髪の毛だって、いつもみたいに後ろに流れていなくて、
まだ湿り気を帯びた長めのその髪を、耳にかけた様子がまた妙に艶かしい。
先生の彼女とかになったら、こんな先生を見る事が当たり前になるのだろうか。
………て。
今、何を考えたの!?
ないないないない!
絶対ないから!!
「……お前、本当どうしたわけ?百面相マイブームなの?」
「ち、違いますっ…!」
そんなわけないでしょうがっ!!
「熱でもあるんじゃねぇの?」
そう言って私の額に触れようとする先生の手に思わずビクッと肩を揺らすと、先生の手が私に触れるのを躊躇するように止まった。
そして、大きな溜息を一つつくと、まだ乾ききっていない前髪をクシャリと掻き上げ、バツの悪そうな顔で前方に目を移した。