先生。あなたはバカですか?
それが悲しくて、頭の中がこの人でいっぱいになって…


「…混乱…していたんです」


「混乱?」


「はい。だから、別に怒っているとか、許せないとか、そういう事ではないので、謝ってもらう必要はありません」


上手く伝わっているかどうかは分からないけれど、取り敢えず謝る必要はない事を伝えられたらそれでいい。


それよりも、さっき先生が素直に謝罪をしてくれた気持ちの方が嬉しくて、


綻びそうになる頬をソファーの上で体育座りをした膝に隠した。


「混乱か…」


先生は、何かを考えるように空に目を泳がせ、ボソッと呟くようにそう言う。


「混乱なら俺もしてた」


「え?」


弾かれるように先生を見れば、その顔は見た事もないような優しい笑みを浮かべていて、


ドクッと脈が跳ね上がる。




うわっ…


この人、こんな顔もするんだ…



そう思った時には、額に優しい体温を感じて、それが先生の手だと分かるにはそう時間は掛からなかった。


「他の男に触られるお前見て、嫉妬した」


「……!?」
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