先生。あなたはバカですか?
「…歩く国語辞典ですね…」


「まーね。」


先生はカラカラと喉を鳴らして笑う。




「これに当てはめたら、芝関と峰山って至って真面目なんじゃねぇの?」




私が驚いたように先生を見上げると、先生はニヤリと不敵な笑みを見せる。


「見たんだろ?さっきあいつらが外で“アイビキ”してるトコ」


「…知ってたんですか?」


「知ってるも何も、俺は峰山に聞きたくもねぇ相談を毎日聞かされてるわ」


先生は、心底うんざりした顔でソファーにもたれかかる。


「先生は、何で止めなかったんですか?」


「止めるかよ。俺と峰山は付き合いが長いんだ。あいつがいい加減な気持ちで芝関と付き合ってるんじゃないことくらい分かってる」


「峰山先生は…真面目な人なんですね」


「俺には負けるけどな?」


「それはないですね」


先生とのそんなやり取りが可笑しくて、お互い顔を見合わせて笑ってしまう。


「なんだ。よかった。笑うじゃねーか。俺の前で笑わないって言われた時は、さすがに諦めかけたんだからな…」


ほっとした表情で私を見る先生。


その手が優しく私の頬を撫でる。
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