先生。あなたはバカですか?
「翠ちゃん…」


「花織…ちゃん…」


目を向けたその先には、バスタオル一枚に身を包んだ花織ちゃんが立っていた。



なっ…何で!?



私は咄嗟に彼女に背を向けてしまう。


まだ…心の準備が出来ていないのにっ…!


「翠ちゃん…」


花織ちゃんは消え入るような声で私を呼ぶと、浴場の床をヒタヒタと歩く音が聞こえてきて、こちらに向かって来ているのだと分かった。


「か、花織ちゃん、さっき入ったんじゃないの!?」


さっき浜辺で見た花織ちゃんは、服装も部屋着姿になっていたし、髪も湿った様子だった。


きっと、湯上りだったのだろう。


なのに何でまたここに居るの!?


「さっき宿の入り口でね、タバコを吸ってる岩田先生に会ったんだ。そうしたら、翠ちゃんなら多分お風呂に行ったって教えてくれて…」


……


やはり、あいつかぁぁぁぁ〜〜!!!


気を利かせてくれたのかもしれないけど、タイミングを考えなさいよぉぉぉ〜〜〜!!!


ふと先生が、しれっとした顔で「知るか。」と言っている映像が浮かんできて、今直ぐにでも一発引っ叩いてやりたい衝動に駆られた。
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