先生。あなたはバカですか?
薄暗くて少し埃っぽい、物置と化した空き教室の中に連れ込まれ、私は先生に後ろから抱きしめられていた。
「はっ…離してくださいっ!」
その手から逃れようと身体をよじるが、ビクともしない。
「やだ。離さない」
それどころか、私に回された先生の腕には更に力がこもる。
「もう…何なんですか…っ。いつも、いつも強引で…!」
「お前こそ何なんだよ」
え?
「捕まえたと思ったら…また直ぐ逃げていきやがるっ…」
耳元で聞こえる先生の声には、どこか切なさが混じっていて…。
私の心臓がギュウっと音を立てる。
苦しいのは…走ったから?
それとも、先生のせい?
…ずるい。
先生は、ずるい。
「……せに」
「あ?聞こえねーよ。もっとでかい声で…」
「散々ほったらかしたくせにっ!!!!」
静かな空き教室の中に、私の声が響き渡る。
叫んだ後、込み上げてくるものを押し込めるように、ぐっと口をつぐめば、
「……は?」
頭上から素っ頓狂な声が降ってきて、はっと我に返る。
しまった…!
つい感情的になってしまった!