先生。あなたはバカですか?

薄暗くて少し埃っぽい、物置と化した空き教室の中に連れ込まれ、私は先生に後ろから抱きしめられていた。


「はっ…離してくださいっ!」


その手から逃れようと身体をよじるが、ビクともしない。


「やだ。離さない」


それどころか、私に回された先生の腕には更に力がこもる。


「もう…何なんですか…っ。いつも、いつも強引で…!」


「お前こそ何なんだよ」


え?


「捕まえたと思ったら…また直ぐ逃げていきやがるっ…」


耳元で聞こえる先生の声には、どこか切なさが混じっていて…。


私の心臓がギュウっと音を立てる。



苦しいのは…走ったから?


それとも、先生のせい?



…ずるい。


先生は、ずるい。



「……せに」


「あ?聞こえねーよ。もっとでかい声で…」




「散々ほったらかしたくせにっ!!!!」




静かな空き教室の中に、私の声が響き渡る。


叫んだ後、込み上げてくるものを押し込めるように、ぐっと口をつぐめば、


「……は?」


頭上から素っ頓狂な声が降ってきて、はっと我に返る。


しまった…!


つい感情的になってしまった!
< 196 / 434 >

この作品をシェア

pagetop