先生。あなたはバカですか?

「いいの?いたずらしても」


顎に置かれていた手が、するりと後頭部に回ってきて更に引き寄せられてしまう。


もはや唇と唇の距離は1センチをきっている。


「…やっ…!」


ダメだ!


降参!!


降参しますからっ!!


お願い離れて!!!


「……かった」


「ん?」


「会いたかったっ…!!」


……なんという屈辱……。


それに耐えるように涙目で、真っ赤になりながら肩を震わせていると、目を見開いていた先生の表情が突然崩れて、「はぁぁ〜…」という大きなため息と共に、床にゴロンと仰向けになった。


先生は、大きな手で目を覆うように押さえながら、なにやら「負けた…」と呟いている。


「お前、どこでそんなテク覚えてきた?悪い子だね」


「は…はぁ!?意味分かりません!!あなたが言えって言ったんでしょう!?」


「ちげーよ。バーカ」


「なっ!」


バカですってぇ!?


言いたくない事言わされた挙句、バカって!


失礼にもほどがあるでしょーが!!


「私、帰りますっ!!」


そう言って立ち上がろうとしたのに、いつの間にかうつ伏せになっていた先生に手首を掴まれていた。
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