先生。あなたはバカですか?
「はい?今、何て言いました?」
昼間と夜間の気温差が激しくなり、夜外を歩くには羽織るものなしでは辛くなってきた10月も半ば。
帰宅途中、ネオンが光る繁華街の中、疲れきったサラリーマン達を避けつつ、私は電話の向こうの相手の声に耳を澄ませながら歩いていた。
『だから、お前どうせこの後家帰っても一人だろ?うちに来いっつってんの』
電話の向こうで、2度も言わせるなとばかりに怠そうな声を出しているのは、今宵も安定した不良教師感を放つ岩田先生だ。
以前、先生と連絡先を交換してからというもの、こうして私の予備校が終わる頃になると先生から電話がかかってくるというのが日課になっていた。
先生と連絡を取るようになってから、初めてラインというものを始めて、
……というより、先生に勝手にインストールされ、初期設定を施され、友達登録というやつまでされて、「これでいつでも簡単に連絡出来るし、電話も無料だから」とか言って、
それからというもの、ことごとくくだらない電話がかかってきたり、メッセージが送られてくるようになったのだ。