先生。あなたはバカですか?



「おせー」


「……」


生田と彫られた表札の前。


それが埋め込まれた石塀に屈んだまま背中を預ける1人の男。


いじっていたスマホから顔を上げ、そう文句を零す岩田先生に、私はあんぐりと口を開けて驚愕していた。


「何やってるんですか!?こんなとんでもなく目立つ所で!!そんな目立つ格好で!!」


先生は、いつも着ているスーツなんかではなく、グレーのパーカーにダメージデニムのジーンズ。おまけにおしゃれなニーカーを履いて、なぜか目にはサングラス。


一瞬、玄関前に一体何者が座っているのかと、顔をしかめて目を凝らしてしまうくらいの別人がそこにいた。


とてもこの人が教師だなんて思えない。


年齢だってさほど変わらなく見えるし、間違いなくチャラい。


いや。世の中的にはこれをおしゃれと呼ぶのだろうが…。


いつもの不良教師な性格には、こちらの方がよほどよく似合ってはいるし、見る人が見ればどこぞの雑誌のモデルよりモデルらしい……

て。いやいや。

今はそんな事を言ってる場合じゃないだろうが。


「も、もし誰かに見られでもしたらどうするんですか!?」


それに、突然お母さんが帰ってくるなんて可能性をこの男は1ミリたりとも考えたりしないのだろうか。
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