先生。あなたはバカですか?
「だから、変装してんだろうが」
「変装……?」
「帰って着替えてきたし。サングラスもしてんだろ」
「……」
変装……だったのか……。
いやまぁ、確かにいつものスーツ姿のこの人しか知らない人間にとってはそうなるのかも。
いやいやいやいや!だけども!
「余計目立ちますから!こんな時間にサングラスかけてる人間がどこにいるんですか!しかもこんなしがない住宅街に!!」
「いちいちうるせーなぁ。お前の声のがよっぽど目立つんだけど」
「ゔっ…」
た、確かに……。
チラリとスマホを確認すれば、もう既に20時を回っている。
私達のいる路地に人はいないけれど、静かな分声がよく響く。
なんだなんだとご近所さんが顔を出してもかなわない。
「と、とにかくですね!すぐにここから離れてください!近所の人に見られる前に!!ただちに!!」
そう言うと先生は怠そうに首を鳴らしながら、
「はいはい。分かった分かった。いいからさっさと制服着替えて来いよ。俺、すぐそこの公園の路肩に車止めてるからそこで待ってる。いいな。5分で来いよ」
そう言って、私の返事一つ待たずに背を向け、スタスタと街灯の当たらない住宅街の闇へと消えて行ってしまった。