先生。あなたはバカですか?

本当に勝手な男だ。


断るつもりが、そのタイミングでさえ逃してしまった。


何はともあれ、制服での接触は危険だ。


“待ってる”と言いながらその辺をうろつかれてもたまらない。



私は急いで家の中へと駆け込み、階段を上がって自分の部屋へ。


クローゼットから適当な私服を引っ掴んで急いでそれに着替える。


それから、さっきまで持っていたスクールかばんをおもむろに掴むと、ドアを閉めたかどうかも分からないほど慌ただしく、部屋から飛び出した。



家を出ると、小走りで先生の指定した場所へと向かう。


住宅街の中にある、小さな公園。


基本的な遊具は揃っているが、特別変わった遊具は見当たらない、この辺の子供達には馴染み深い公園だ。


その公園を囲う歩道に寄せるように止まっている車。


見覚えがある。


間違いなく岩田先生の愛車だ。



誰もいないか周囲を確認。


胸に手を当て上がった息を整え、いざ。


––––コンコン


運転席で何やら資料を確認している岩田先生はそのまま目を上げ、“入ってこい”と言うように助手席を顎で指す。


近所の目もあるし、どうやら乗らなきゃ話が始まりそうにない。
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