先生。あなたはバカですか?

私は小さなため息を一つつくと、反対側に回り込み、車のドアを開けた。


「待て。今片付ける」


そう言うと先生は、助手席に散らばった資料を纏めてカバンの中へ。


「いいぞ」


その言葉を合図に、私はそこへと乗り込んだ。


先生の車は、少しだけタバコの匂いがする。


「何してたんですか?」


「受け持ってるクラスの課題の採点」


「課題?この時期に課題ですか?」


不思議そうに首を傾げる私に、先生はじと目を向けてくる。


「お前ら特進クラスと違って、俺の受け持つクラスは進学するやつばっかじゃねーんだよ。課題でも出してやらなきゃ、とてもじゃないが卒業なんかさせられないようなやつもいる。そいつらの課題」


なるほど。


それで受験組が入試に向けての実践問題ばかりを解く中、成績を付ける為だけの課題なんてやっているわけね。


上位大への進学希望の生徒だけしかいない、特進クラスを受け持つ峰山先生も大変そうだけど、進学希望の生徒と他の道に進む生徒の混ざる、普通クラスを受け持つ岩田先生も別の意味で大変そうだ。
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