先生。あなたはバカですか？

だとしても、この男のこの「ほらな」と言いたげな顔……。


言い当てられた恥ずかしさと、バカにされている悔しさで、私の体はわなわなと震えていた。


「正直、ショックだったぞ」


突然、先生の真面目な声が降ってきて、私は訝しげに顔を上げる。


「……ショック？」


「峰山からお前の事聞いた時。

俺はお前の事は、お前の口からちゃんと聞きたかった」


少し寂しそうな表情になる先生に、ちくんと胸の奥が痛む。


「……言うほどの事でもなかったので……」


「うん。でも俺は、お前の事ならどんな些細な事でも知りたいよ」


「……え？」


「無理に聞き出そうとは思わない。だけど、お前を……翠の全部を知ってるのは俺でありたい」


「……っ」


先生は、そんな風に思ってくれていたんだ。


私が“可哀想”だからという理由で、側にいてくれているわけじゃないんだ。


そうよね。


岩田先生は、こういう人だ。


私の境遇じゃなく、私自身を見てくれる。


そういう人……。


真っ直ぐ私を見つめる先生の瞳を、強く見つめ返す。


「先生。少しだけ、聞いてもらってもいいですか？」