先生。あなたはバカですか?
私がそう言うと、私の目を見つめたまま、目を細めて頷いた。
それから私は、ソファーに座る先生の横で、お父さんがいなくなった13歳の頃からの話を、出来るだけ手短に話した。
自分の話をこんな風に人に話すなんて初めての事で、話をしている間も本当にこんな話をすべきなのか、ずっと不安がつきまとっていた。
大して面白い話でもないし、先生を退屈にさせてしまっているかもしれない。とずっと肩に力が入りっぱなしで……。
だけど先生は、そんな私の話に相槌を打つわけでもなく、優しい瞳でただじっと私の目を見つめながら聞いてくれていた。
全てを話し終えると先生は、私の頭をクシャリと撫でて。
「話してくれてありがとな」
先生が言ったのはただそれだけだったけど、私にとっては、どんな言葉をかけられるよりホッとしたんだ。
気付けば、私の心は話をする前よりずっと軽くなっていた。
もしかしたら私は、ずっと誰かにこの話を聞いてほしかったのかもしれない。
今までの私を、今の私を、否定も肯定もしない誰かに……。
だって、もしも“可哀相”だなんて言われたら、まるで今までの私を全否定されているような気持ちになる。