先生。あなたはバカですか?

「前は絶対に後悔なんかしないって思ってたんだ。だけどね…日に日に貪欲になっていくの。もっともっと近くに行きたくなるの。翠ちゃんの話を聞いてね…凄く凄く羨ましくて……。“何で私は”って、たくちゃんに恋した事すら後悔をしそうになる自分も大嫌いで…」


恋って不思議だな。


こんなに頭が良くて、要領だっていい花織ちゃんですら、自分を上手くコントロール出来なくなってしまう。


自分を嫌いになってしまいそうなほど、頭を悩ませるんだ。


きっと、前までの私だったら“何でそうまでして恋なんてするのだろう?”と不思議に思ったかもしれない。


でも、今なら花織ちゃんの気持ちがほんの少しだけど分かる気がする。


私も知ってるもの。


自分をコントロール出来なくなってしまうほど、今まで生きてきた世界さえも捨ててしまえるほど、影響を及ぼす存在がいるって事。


「それは、後悔って言わない」


「え?」


「花織ちゃんは峰山先生と、“もっとこうなりたい”って理想があるだけ。理想を持つことは決して悪い事じゃない。理想を持つから、人は今を努力出来るんだもの。
だから花織ちゃんは、自分を嫌いになる必要なんてない」
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