先生。あなたはバカですか?
いや、だってあなた。
この間私に、告白しませんでしたっけ?
それも何かさらっと。
だけどその後、壁ドンっと。
それに、この人は私達の重要な秘密を知っている……。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。誰にも言ってないし、言う気もないから」
「……っ」
「生田さんきっと心配してるだろうと思って、それ言いに来ただけだから」
「川島君……」
そうだよね。
よくよく考えたら、川島君はそんな事をする人じゃない。
何だか失礼な態度をとってしまったな。と反省したその時……–––
「あと……」
「……え?」
–––––グイッ
「“俺、諦めるつもりはないから”
って言いに来た」
そう耳元で囁かれ、私は慌てて彼から飛び退いた。
「な……っ」
「何となく、まだ奪える余地がある気がするんだよね」
真っ直ぐ私を見つめながらそんな事を言う川島君。
川島君は、一体何が言いたいんだろう?
「今は我慢する。だけど、隙が見えたらすぐに奪いに行くからね?」
そう言って川島君は私の頭をぽんぽんっと叩いて、来た道を戻って行ってしまった。
「なん……なのよ……」
いつもの気だるい様子じゃなく、あんなに真剣な眼差しで見つめられたら、ドキドキするなって方が無理な話だ。