先生。あなたはバカですか?

いや、だってあなた。


この間私に、告白しませんでしたっけ?


それも何かさらっと。


だけどその後、壁ドンっと。


それに、この人は私達の重要な秘密を知っている……。


「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。誰にも言ってないし、言う気もないから」


「……っ」


「生田さんきっと心配してるだろうと思って、それ言いに来ただけだから」


「川島君……」


そうだよね。


よくよく考えたら、川島君はそんな事をする人じゃない。


何だか失礼な態度をとってしまったな。と反省したその時……–––


「あと……」


「……え?」


–––––グイッ



「“俺、諦めるつもりはないから”

って言いに来た」



そう耳元で囁かれ、私は慌てて彼から飛び退いた。


「な……っ」


「何となく、まだ奪える余地がある気がするんだよね」


真っ直ぐ私を見つめながらそんな事を言う川島君。


川島君は、一体何が言いたいんだろう?


「今は我慢する。だけど、隙が見えたらすぐに奪いに行くからね?」


そう言って川島君は私の頭をぽんぽんっと叩いて、来た道を戻って行ってしまった。


「なん……なのよ……」


いつもの気だるい様子じゃなく、あんなに真剣な眼差しで見つめられたら、ドキドキするなって方が無理な話だ。
< 275 / 434 >

この作品をシェア

pagetop