先生。あなたはバカですか?
この人、本当に自分の身とかどうでもいいのね。
「……それに、“奪える余地”…ねぇ……」
「え?」
「いや…何でもない」
「?」
*
「うわぁ……!」
「なかなか美味そうに出来たな」
リビングのローテーブル上で、胃袋を刺激する何とも優しい香りを放っているのは、土鍋に入った野菜たっぷり鶏団子鍋だ。
「先生!私、この鶏団子まるめました!!」
「だな」
「この白菜、私が切ったんですよ!!」
「ふはっ!一緒に作ったんだから知ってるっつの」
先生の服の裾をグイグイと引っ張りながら興奮気味で訴える私に、先生は眉を八の字にして笑っている。
それを見て、さすがに恥ずかしくなった私は、思わず口をつぐんで頬を染めた。
笑われてしまった……。
だって、まさか自分が手を加えた料理が、こんなに美味しそうな物に仕上がるとは思わなかったんだもの。
あまりに嬉しくて、ついはしゃいでしまった……。
ちらっと先生に目をやるとぱちっと目が合ってしまって、優しく目を細めながら「上出来上出来」と言って、まるで子供をあやすかのように頭をなでられてしまった。
うう……。
何だか悔しい……。