先生。あなたはバカですか?

この人、本当に自分の身とかどうでもいいのね。


「……それに、“奪える余地”…ねぇ……」


「え?」


「いや…何でもない」


「?」







「うわぁ……!」


「なかなか美味そうに出来たな」


リビングのローテーブル上で、胃袋を刺激する何とも優しい香りを放っているのは、土鍋に入った野菜たっぷり鶏団子鍋だ。


「先生!私、この鶏団子まるめました!!」


「だな」


「この白菜、私が切ったんですよ!!」


「ふはっ!一緒に作ったんだから知ってるっつの」


先生の服の裾をグイグイと引っ張りながら興奮気味で訴える私に、先生は眉を八の字にして笑っている。


それを見て、さすがに恥ずかしくなった私は、思わず口をつぐんで頬を染めた。


笑われてしまった……。


だって、まさか自分が手を加えた料理が、こんなに美味しそうな物に仕上がるとは思わなかったんだもの。


あまりに嬉しくて、ついはしゃいでしまった……。


ちらっと先生に目をやるとぱちっと目が合ってしまって、優しく目を細めながら「上出来上出来」と言って、まるで子供をあやすかのように頭をなでられてしまった。


うう……。


何だか悔しい……。
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